-あわいろ言葉館-

『Dear コゼット』



私が少女だった頃に住んでいたおうちは

甘い甘いお砂糖でできた

お菓子の国の中にあった



ミルフィーユの木も

マシュマロの雲も

コンペイトウのお花も

オレンジジュースの川も

バウムクーヘンの椅子も

プディングのテーブルも

どれもみんな魅力的で

甘い誘惑に満ちていたわ



春には綺麗なコンペイトウが

どこのお庭にも咲き誇って

ミルフィーユの街路樹たちには それはそれは

たくさんのケーキがなっていたわ



夏にはパラソルチョコレートをさして

ソーダの湖のほとりに座ってた

ココアパウダーを被って

真っ黒に日焼けしたくは無かったから



秋にはクッキーの道に落ちた

シュークリームをたくさん拾った

小さい私では二つしかもてなかったけれど

毎日毎日拾っても

シュークリームはまだまだ

たくさんあったのよ?



冬にはシュガーパウダーが

優しく降り積もって

湖をシャーベットに変えてしまうの

バスケットに詰めたキャンディーがなくなるまで

ずっとお外を眺めていたわ



私が成長してからは

それが幻だと気づいてしまった

世界は甘いお菓子じゃなくて

腐ったお肉でできていた

甘い甘いデコレーションに隠されて

上手く姿を隠していたのね



プディングのテーブルを ひとくちだけ食べようとして

お母様にひどくしかられたわけが

今 ようやくわかったわ



だけど私は

少女の頃見たお菓子の国を

忘れることなんてできないの

だからお母様からこっそり隠れては

甘かったはずのテーブルを

一口だけかじってみるの



もしもその一口が甘かったら


まだ


世界を許せるかもしれないから